マンスプとはマンスプレイニングの略であり、特に男性からの一方的な説明や、女性の意見を軽視する行為を指します。SNSなどでマンスプおじさんと呼ばれていたりしますね。
軽視する言動により自信を失ったり、ストレスを感じた事がある人は、この記事を読んで具体的な対処・対策をしっかり学びましょう。

マンスプとは?起源と広がり
マンスプとは略された言葉であり、正しくはマンスプレイニング(mansplaining)という言葉です。
この言葉は男性が女性に対して相手の経験や知識を軽視し、上から目線で説明をする行為を指します。この言葉は「man(男性)」と「explaining(説明する)」の合成語であり、特に女性が説明を求めていないにも関わらず、男性が自信満々に物事を解説しようとする場面に対する批判を含んだ言葉です。
この概念は、ジェンダーに根ざした権力関係と深く結びついています。歴史的に、男性が社会的・経済的に優位な立場にあったため、「女性は男性よりも物を知らない」という考え方のもとに、「無知な存在」と女性の意見や知識が軽視される場面が多くありました。その結果、女性が専門的な知識を持っていたとしても、男性が無意識のうちに「自分の方が知識がある」と思い込み、必要以上に説明しようとすることがあります。
マンスプレイニングは、ジェンダー平等の妨げになると批判されることが多く、女性の発言機会を奪ったり、専門性を軽視する結果につながります。近年では、こうした無意識の偏見に気づき、対等な対話を心がけることが重要だとされています。
マンスプレイニングという言葉が広まるきっかけとなったのは、アメリカの作家レベッカ・ソルニットの著書『説教したがる男たち(Men Explain Things to Me)』です。
彼女は自身の体験をもとに、女性が話をしているにも関わらず、男性が一方的に説明を始めるケースが多いことを指摘しました。
2014年には、オックスフォード英語辞典に「mansplaining」という単語が登録され、社会問題として認識・議論されるように。
現在では、英語圏のみならず、日本でも注目されており、マンスプおじさんと呼ばれることもあります。
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なぜマンスプレイニングは問題なのか?うざい理由を解説
マンスプレイニングが社会的に問題視されるのは、単なる「うんちく好き」や「説明好き」の範疇を超えて、権力構造の再生産につながるからです。
具体的には、以下のような影響が指摘されています。
女性の尊厳や能力の軽視
男性が女性の知識や経験を軽視し、一方的に説明することで、「女性は理解力が低い」「女性は権威に従うべき」といった偏見が強化されます。
こうした女性個人の能力や理解力を無視した行動は、自己肯定感の低下につながりやすいです。
職場での不平等の助長
仕事の場面では、女性が専門的な知識を持っているにも関わらず、マンスプレイニングによって意見を軽視されることも。
結果として、女性の発言権が低くなり、昇進や評価に影響を及ぼす可能性があります。
心理的ストレスの増加
マンスプレイニングを受け続けた女性は、無意識のうちに「自分の意見は尊重されない」「意見を言っても意味がない」と感じるようになり、精神的なストレスを抱えることになります。
これが長期化すると、職場や人間関係に対する不満や孤立感につながることもあります。
マンスプレイニングの具体例と場面別解説
職場でのマンスプレイニング
職場におけるマンスプレイニングの具体例はいくつかあります。以下にいくつかの事例を挙げてみます。
一方的な説明
マンスプレイニングの典型例として挙げられるのが、女性の同僚がすでに知識を持っている分野について、男性の同僚が独断的に詳しい説明を始めるケースです。この際、女性がすでに知識を持っているにもかかわらず、相手には知識がないと決めつけて説明することが問題となります。
役割に対する偏見
女性が新しいビジネスを立ち上げようとしているとき、男性同僚が「女性には難しい」といった偏見に基づいた考えを持ち込み、「まずはこうするべきだ」と自分の経験をもとに押し付けてくるのもマンスプレイニングにあたります。このようにして、女性の意見が軽視され、話の流れを制御されるのが問題です。
過小評価
会議の中で、女性が自分の意見を述べると、男性がそれに対して「それはこういう意味で、実際にはこうなんだけどね」といった形で、女性の発言を否定し、無知と決めつけて説明しようとすることもマンスプレイニングのひとつです。このような態度は、女性の自信を損なわせ、発言回数を減少させる要因になります。
知識のひけらかし
共有会などにおいて、男性が専門知識を持っていることを強調し、自分の経験を基に他のメンバーに一方的に語りかける様子もマンスプレイニングと言えるでしょう。女性がすでに理解している内容でも、改めて男性が詳しく説明することで、女性が過小評価される結果となります。
意見を無視
女性が何か意見を述べた際に、男性がその意見を軽視し、自分の考えや意見を優先的に述べ続けることも、マンスプレイニングの一環と言えます。
このように女性の意見が無視され続ける環境は、自信を失わせる結果につながります。
意見の軽視や手柄の横取り
マンスプレイニングの一つの形として、女性の意見を軽視しながらも、あたかも自分の考えであるかのように言い換える行為が挙げられます。
これは、女性の発言の価値を下げるだけでなく、結果的に男性側が手柄を横取りする形にもなりうる行動です。
例えば、女性が新しいマーケティング戦略を提案した際に、男性上司が「それってつまり○○ってことだよね?」と、すでに話していた内容を言い換えるだけの説明を始めるケースがこれに当たります。
このような状況が続くと、女性の意見が軽視されるだけでなく、最終的に「男性の発言のほうが信頼できる」といった職場の空気が醸成されてしまいかねません。
医療に関する解説
女性医師が男性患者に診察をしている際、男性が医療の専門知識を持たないにも関わらず、女性医師を「看護師」と呼び、「正しい治療法」について横柄に提案することもマンスプレイニングのひとつ。これは職業としての専門性を無視し、女性の力を軽視する行為です。
家族や恋人間でのマンスプレイニング
マンスプレイニングは、家族や恋人間でも起こることがあります。
よくあるのは家事や育児のやり方、知識のひけらかし、一方的なアドバイスなどです。
ここでは、具体例を交えながら恋人・家族間のマンスプレイニングを紹介します。
家事に関するアドバイス
家庭でのマンスプレイニングの例としては、家事をほとんどしない男性が、料理や掃除に関して「こうするのが正しい」と上から目線でアドバイスすることが挙げられます。実際に妻が子育てや仕事で忙しいなか、まるで専門家のように振る舞うのが特徴で、妻の努力を否定する形になりがちです。
育児についての説教
子育てをしている女性に対して、男性が「母親ならこうするべき」と説教をしたり、「子育てはこうするのが正解だ」と説明したりすることもマンスプレイニングのひとつ。こうした男性は自分の意見を押し付けて、女性の経験や考えを無視することが多いです。
2020年にSNSで育児に関するマンスプレイニングの話が話題になったこともあります。
内容は、惣菜コーナーでポテトサラダを買おうとした子連れの女性が、高齢男性に「母親ならポテトサラダぐらい作ったらどうだ」と言われているのを見た、というものです。
これも、自分の考えを押し付けたマンスプレイングとして考えられています。
技術的な知識の披露
夫や彼氏が普段ITやエンジニアリング分野に関わっていない女性に、「コンピューターの使い方」や「プログラミングの基本」を教えようとする場合。こうした、頼まれてもいないことを一方的に説明しようとするのもマンスプレイニングの一例です。
また、既に技術的な知識を持っている女性に対して男性が「女性が知らない前提」で自分の知識をひけらかす行為は、相手が劣っているかのように感じさせる行動になる可能性もあります。
恋愛や人間関係についての意見
恋人同士の会話の中で、男性が女性に対して「こうすればもっと良い関係が築ける」など、一方的にアドバイスをするのもマンスプレイニングのあるある例のひとつ。女性が何を考えているのかを無視し、自分の経験を基に上から目線で語ることが多いです。
SNSでのマンスプレイニング
マンスプレイニングは、SNS上でもよく確認されます。
概念の押し付け
SNSへの投稿のような、切り取られた日常の一部からすべてを知った気になり説教するのもマンスプレイニングのひとつです。
具体例としては、子どもを持つ母親がSNSに友達と遊びに行ったことを投稿した際「いつも遊んでばかりで、子どもを放置してる。母親な○○であるべき」などとコメントする行為が挙げられます。
相手を無知と断定する行為
ある女性が気候変動についてSNSに投稿したところ、男性が「いや、それはこういうことだよ」と、彼女がすでに知っている基本的な情報を長々と説明するのも、ネット上でよくあるマンスプレイニングです。
これは、マンスプレイニングする男性側の「女には気候変動についての知識がないだろう」という無意識の決めつけが原因となっています。
マンスプレイニングを受けたときの撃退法
一方的に押し付けられる意見や価値観は、女性でなくてもうざいと思ってしまうような内容ばかり。そんなマンスプレイニングを浴びたときは、冷静に対処することが肝心です。
特に、マンスプレイニングをする男性は相手のリアクションが大きいほど自分の行為が正しいと勘違いしやすくなる傾向があります。
ですから、マンスプレイニングを受けたときは感情的にならず、自分の意見をしっかり示すことが大切です。
聞き流す
あまり深入りせず、興味がない素振りを見せて軽く聞き流すのも一つの方法です。相手に「興味を持っている」と思わせず、じっくりと相手の話を聞く必要はありません。
適度に切り上げる
相手が説明を続けたがっている場合でも、自分の考えや意見を短く述べて、話を切り上げることが重要です。「あなたの意見も分かるけれど、私の考えではこうなんです」といった具合に、丁寧に引き取ることで自分の立場を示すことができます。また、その相手と議論する必要性がそもそもなければ「ありがとう」とだけ伝え、別の会話にシフトしましょう。
冷静に伝える
「それについては私はすでに知っているので、具体的な点に焦点を当てたい」と冷静に指摘する方法もあります。感情的にならず、相手の発言に対して理論的に反論することで、対等な立場を保つことができます。
質問を投げかける
逆に質問をすることで、相手を無力化することができます。「その情報源はどこですか?」「興味深い説明です!私が見落としている具体的な点を教えて下さい」と尋ねることで、相手の一方的な考えであったり、質問の仕方によっては自分が相手の想像以上に情報を持っていることに気づかせることができます。
一歩引いて観察する
自分の感情を整理し、相手の行動を冷静に観察することも有効です。相手がどのように説明をしているのか、またその意図を理解することで、次の行動を考えやすくなります。
距離を置く
マンスプレイニングをする相手とは距離を置くことも効果的です。必要以上に関わりたくない場合は、物理的・心理的に距離を保つことで自己防衛を図ることができます。
ユーモアで乗り切る
時には、笑いを交えることも効果的でしょう。「なるほど、その理論は新しい切り口で面白いけど、私はこう考えています。」「ありがとう!では博士の意見にも耳を傾けつつ、私の提案を聞いてもらってもいいかな?」
相手を褒める
たとえば、「へ~、そうなんですね」といった軽い言葉を使って、自分が理解していることを示しつつ、話を引き取ることができます。これにより、相手の気を悪くせずに話を終わらせることができます。
これらの方法を組み合わせて、状況に応じて柔軟に対処することで、マンスプレイニングに対抗する力を強化できます。
マンスプレイニングする男性心理
そもそも、なぜマンスプレイニングが起きるのでしょうか?それは、社会的な背景や、性別による役割分担の影響が深く関与しています。主な要因として以下の点が挙げられます。
固定観念や偏見
男性は「女性は男よりも知識がない」といった先入観を持ちがちで、それに基づいて女性を見下す態度を取ることがあります。このような考え方は殆どが無意識に行われ、性別に基づく役割分担や能力の差を当然とする文化的背景が影響しています。
多くの社会では歴史的に男性がリーダーである歴史が多く、重要な事を決定する場面では男性がそのような役割を果たしてきました。それ故、男性が立場として上であることが当然であると考えてしまう人が発生し、マンスプレイニングが行われやすいです。
自信過剰
マンスプレイニングを行う男性は、自分の知識や能力に対して過度に自信を持っていることが多く、相手の意見や経験を軽視してしまいます。そのため、相手に必要以上の説明を試みてしまうのです。
高い承認欲求
「自分が正しい」と認められたい、または「褒めてほしい」といった承認欲求が強いことも一因です。このような心理が働くと、男性は自分の立場を優位に保ちたいと願い、無意識にマンスプレイニングを行ってしまいます。
コミュニケーションの支配欲
男女間にはコミュニケーションスタイルの違いがある場合があります。一般的に、男性は解決策を提案したり、自分の知識を示す傾向が強く、女性は共感を示したり、話を聞くことを重視するのが特徴です。もちろん全ての人に当てはまることではありませんが、このスタイルの違いが、誤解やマンスプレイニングの一因になることがあります。
また、マンスプレイニングを通じて、自己を主張する女性を黙らせたいという心理を持つひとも一定数います。これにより、男性は会話を支配しようとする傾向が強まります。
無知や経験不足
自分の知識や経験だけを基に話を進めることが多く、相手の理解や経験を考慮しないことがマンスプレイニングを助長します。
これは男性は社会的に「知識を持つことが重要」とされるため、何に対しても「自分のほうが詳しいふり」をしてしまうことが原因です。
マンスプレイニングされる女性の心理
マンスプレイニングを受ける女性は、無力感・苛立ち・自信喪失など、さまざまな心理的影響を受けます。
特に、自分の知識や経験が軽視されることに対する苛立ちや不快感を覚えることが多いです。
すでに理解していることを一方的に説明されることで、「自分は信頼されていないのでは?」と感じたり、発言の機会が奪われることで、自信を失ったりするケースもあります。
こうしたマンスプレイニングによる影響は、職場での評価やキャリア形成に悪影響を及ぼす可能性があり、対話の場に不平等な力関係が生まれやすいです。
性別関係なくマンスプレイニングに気をつけるべきポイント
マンスプレイニングは男性だけの問題ではありません。
女性→女性、女性→男性も起こり得ますし、男性→男性でのマンスプレイニングも存在します。
無意識のうちに自分がマンスプレイニングする側にならないためには、相手を尊重したコミュニケーションを心がけることが大切です。
マンスプレイニングをしないためには、まずは相手にどのくらい話題に対する知識があるか確認することが重要です。
説明をする際は、まずは相手の話を全部聞くことを意識し、相手の反応を見ながら話の流れを遮っていないか?一方的になっていないか?をチェックしましょう。
こうしたポイントを意識することで、マンスプレイニングにならず、円滑なコミュニケーションを取りやすくなります。
おわりに:マンスプとは見直すべき価値観
どの具体例も「うざい」と思われて仕方ない内容ばかりでしたね。マンスプレイニングは普段からの考えが行動に出ているものです。一度でもマンスプレイニングだなと思った場合、相手は多少なりともあなたなり女性を下に見ていると考えても良いかもしれません。
できるだけ聞き流すなどをして、カッとせず落ち着いて行動するようにしましょう。