お正月料理である「おせち料理」は、年の始まりを祝い、家族や友人と共に新しい年の幸せを願うために食べられる料理です。
しかし、身近な家族や親しい人が亡くなった際に迎える「喪中」の期間では、祝い事を避けるのが一般的とされています。そのため、喪中の期間におせち料理を食べるのは避けられることが多いです。しかしながら、喪中においてもおせち料理に含まれる縁起の良い食材や味わいを楽しみたいという方も多くいます。そこで登場するのが「ふせち料理(喪中おせち)」です。
ふせち料理は、おせち料理の代わりに喪中でも安心して楽しめる、精進料理をベースに作られた料理です。喪中でも食べられるふせち料理の特徴や、代替となる食材、そしてその入手方法について詳しく解説していきます。
喪中とは?
喪中とは、身内や親しい人が亡くなった後の一定期間、哀悼の意を表すために控えめな生活を送る期間のことを指します。一般的には、12ヶ月間を目安に喪に服すとされますが、故人との関係性や地域の習慣によって異なります。この期間中は、お祝いごとや派手な行事を避けることが一般的です。
おせち料理は、年神様(新年の神様)を迎えるための料理であり、新しい年の豊穣や健康、繁栄を願う意味が込められています。そのため、喪中の間はおせち料理を控えることが多いですが、代わりに「ふせち料理(喪中おせち)」を用いることで、喪中のしきたりを守りながらも年始の食事を楽しむことができます。
ふせち料理(喪中おせち)の特徴
1. 縁起物を避ける
おせち料理には、縁起物の食材が多く含まれています。例えば、「黒豆」は「まめに働く」や「まめに健康に過ごす」といった意味を持ち、「紅白かまぼこ」は紅白がめでたいとされる配色から祝いの象徴とされています。しかし、喪中ではこのような「祝い」や「縁起」を意識した食材は避けるべきです。
ふせち料理では、祝いの意味を持つ食材や色合いを控えめにし、より落ち着いた味わいや見た目を重視します。例えば、黒豆の代わりに小豆や他の豆類を使った料理にしたり、紅白かまぼこの代わりに普通の白いかまぼこや練り物を使ったりすることができます。
2. 華やかさを抑えた盛り付けや食器
おせち料理は、見た目が華やかで豪華なことが特徴です。しかし、ふせち料理ではその華やかさを控え、シンプルかつ落ち着いた盛り付けを心掛けます。特に、赤や金などの派手な色彩を避け、白や黒、茶色といった控えめな色合いの食材を使用することが一般的です。
例えば、野菜の煮物や焼き魚、煮豆など、シンプルな和食の要素を中心に取り入れた料理にすることで、喪中の雰囲気に合った落ち着いた食卓を作ることができます。
また、「めでたさを重ねる」意味のある重箱や「おめでたい」祝箸の使用は控えましょう。
3. 伝統を守りつつも控えめな味付け
おせち料理には、祝いのために甘さや塩味が強調された味付けが多いですが、ふせち料理では味付けも控えめにすることがポイントです。例えば、砂糖や醤油の使用を減らし、素材本来の味わいを生かした調理を心掛けます。
また、通常おせち料理として提供される料理も、少し味を薄めたり、代わりにシンプルな具材に置き換えることで、喪中の間でも楽しめる一品となります。
ふせち料理(喪中おせち)に使われる主な食材
ふせち料理では、おせち料理と同じく、日本の四季や豊かな食材を活用しつつも、祝いの意味を持たない食材を選びます。ここでは、ふせち料理に適した主な食材とその調理法を紹介します。
根菜類
にんじん、大根、ごぼうなどの根菜類は、シンプルな味わいと栄養価が高いため、ふせち料理には最適です。これらの野菜は、煮物や酢の物として活用することで、彩りを加えつつも控えめな一品に仕上げることができます。
煮物: にんじんや大根、ごぼうなどをだし汁で優しく煮込んだ煮物は、落ち着いた味わいと見た目が喪中の席にぴったりです。
酢の物: 酢を使ってさっぱりとした味付けにすることで、箸休めにもなり、バランスの取れた食事が楽しめます。
白身魚
祝いの象徴となる「赤」や「金」を避けるために、ふせち料理では白身魚がよく用いられます。白身魚は淡白な味わいでありながら、適度なうま味と食感があり、さまざまな調理法に対応できます。
焼き魚: シンプルな塩焼きや蒸し料理として白身魚を提供することで、落ち着いた一品になります。
昆布締め: 魚を昆布で締めて旨味を引き出した昆布締めは、控えめな味付けでありながら深い味わいが楽しめます。
きのこ類
きのこ類は、ふせち料理において重要な役割を果たす食材の一つです。椎茸、しめじ、舞茸などのきのこ類は、低カロリーでありながら食感が豊かで、さまざまな料理に取り入れることができます。
炊き込みご飯: きのこを使った炊き込みご飯は、控えめながらも深い味わいが楽しめる一品です。
煮物: きのこを他の野菜と一緒に煮込むことで、シンプルでヘルシーな煮物が完成します。
豆類
豆類は、祝いの象徴として使われることが多い「黒豆」を避け、他の種類の豆を使うことがふせち料理のポイントです。小豆や大豆、いんげん豆などを使った料理は、栄養豊富でありながらも、喪中に適したシンプルな味わいを提供します。
煮豆: シンプルに煮た小豆やいんげん豆は、控えめな味付けでありながら食べ応えがあり、食卓を豊かにします。
豆腐料理: 豆腐を使った料理も、ふせち料理においてよく用いられます。特に豆腐のステーキや煮込み料理など、バリエーション豊富な調理法があります。
ふせち料理(喪中おせち)の市販品や通販はあるの?
おせち料理と同様に、ふせち料理も市販品を通販やデパートなどで購入可能です。
また、おせち料理を扱っている仕出し料理店がふせち料理も販売している場合があります。販売されていない場合でも「祝いの意味を持つ食材を使わない懐石料理を詰めたものが欲しい」と注文すると対応してもらえる可能性があります。
まとめ
喪中の期間は祝い事を避けることが一般的ですが、年始の食事を楽しむことを完全に諦める必要はありません。ふせち料理は、おせち料理に代わるものとして、落ち着いた味わいと見た目を提供し、家族や親しい人と共に新年を穏やかに迎える手助けとなります。
食材選びや盛り付け、味付けに少し気を使うだけで、喪中でも心地よい食卓を囲むことができるでしょう。