SNSを見ていると、毎日のように「炎上」という言葉を目にします。「〇〇が大炎上!」「ネットで批判殺到!」といったニュースを見て、「また誰かがやらかしたのか」と思う人も多いでしょう。しかし、本当に「炎上」しているのでしょうか?
実は、炎上と呼ばれるものの中には「非実在型炎上」が含まれています。これは「実際にはそこまで騒がれていないのに、大炎上しているように見える現象」のことです。なぜこうした「見せかけの炎上」が起こるのでしょうか?
「非実在型炎上」の正体やSNSで炎上してしまう仕組み、本当の炎上かの見極め方について詳しく解説していきます。

非実在型炎上の正体:「声の大きい少数派」が作り出す炎上
ネット上で「炎上」と言われると、あたかも多くの人が怒っているように感じます。しかし、実際には「声の大きい少数派」が目立つことで、あたかも大炎上しているように見えるだけというケースが少なくありません。実際、SNSで炎上しているとされる投稿のリプライや引用リツイートを詳しく見てみると、発信しているのは特定の層に偏ったアカウントだけだったり、繰り返し同じ人がコメントしていることも多いのです。
では、なぜ「炎上しているように見える」のか?ここでは、非実在型炎上が生まれる仕組みを詳しく解説していきます。
非実在型炎上が生まれる流れ
① 一部のアカウントが批判を投稿
ネット炎上の発端は、多くの場合「ごく一部のアカウント」が投稿した批判から始まります。例えば、ある有名人が発言をしたときに、それを気に入らない人が「これは問題だ」とSNSで指摘するでしょう。しかし、その時点ではほとんどの人は気にしていないか、そもそも発言を知らない状態です。
② 便乗する人が現れ、拡散される
SNSでは、ひとつの批判が投稿されると、それに便乗して拡散する人が現れます。「こんな発言があったらしい」「これは炎上案件では?」といった投稿が増えることで、次第に話題が広がっていきます。
しかし、ここで重要なのは、実際には批判している人の数はそれほど多くないということ。数十件の批判的な投稿があるだけで、「これは炎上しているのでは?」という雰囲気が作られてしまうのです。
③ まとめサイトやニュースメディアが取り上げる
SNS上で話題が広がると、今度はまとめサイトやニュースメディアが「ネットで炎上!」と記事にします。
特に、炎上ネタはPV(ページビュー)を稼ぎやすいため、メディア側も「炎上」として大きく報じることが多くなります。たとえTwitter(X)上で批判の投稿数が少なくても、「ネット上では賛否両論」「批判の声が相次ぐ」といったタイトルで取り上げられると、炎上しているように見えてしまうのです。
④ 「みんな怒ってる」と錯覚される
こうして「ネットが荒れている」「大炎上!」という見出しがつくと、実際には騒ぎに関心を持っていなかった人まで「大問題が起こっているのかも」と錯覚してしまいます。
さらに、SNSの特性上怒りや批判的な意見のほうが拡散されやすいため、ネガティブな投稿ばかりが目につくようになるという現象も起こります。その結果、「多くの人が怒っている」と思い込んでしまうのです。
実際にどれくらいの人が関心を持っているのか?
では、実際にどれくらいの人が炎上について関心を持っているのでしょうか?
過去の炎上事件を振り返ると、「大炎上」と言われた出来事でも、実際にはごく一部の人しか話題にしていなかったというケースが多々あります。
例えば、ある有名人の発言が「ネットで大炎上!」と報じられたケースでも、Twitter(X)で検索してみると実際の投稿数は100件程度だったりします。それにも関わらず、メディアが取り上げることで「あたかも世間全体が怒っているかのような錯覚」が生まれるのです。
また、世論調査などでも「炎上について知っていたか?」と聞くと、半数以上の人が「知らなかった」と答えることが多いというデータもあります。つまり、ネットの一部のコミュニティで盛り上がっているだけで、実際にはほとんどの人が関心を持っていないことも少なくないのです。
SNSの仕組みが炎上を増幅させる
ネット炎上が拡大する背景には、SNSのアルゴリズムの仕組みが大きく関係しています。SNSは、ユーザーが長く利用し続けるように設計されており、特に「感情を揺さぶるコンテンツ」が拡散されやすいという特徴があります。
そのため、炎上のような「怒り」や「批判」の投稿は、SNSの仕組みによって増幅され、必要以上に大きな話題になってしまうことがあるのです。
では、なぜ炎上しやすいのか?SNSのアルゴリズムとユーザーの心理を詳しく見ていきましょう。
「怒り」は拡散されやすい感情である
心理学的に、人はポジティブなニュースよりもネガティブなニュースに強く反応する傾向があります。特に、「怒り」は人の行動を引き起こしやすい感情の一つであり、SNS上では次のような行動を誘発します。
- 怒りを感じた人が 「こんなことが許せない!」と投稿する
- その投稿を見た人が 「私も同感!」と共感して拡散する
- さらに、それに反論する人が現れて 議論が激化し、より拡散される
このように、炎上は「怒りの連鎖」によって加速し、瞬く間に広がっていくのです。さらに、SNSの「いいね」や「リツイート」「シェア」といった機能が、こうした投稿の拡散を後押しします。「いいね」や「リツイート」が多くついた投稿は、より多くの人のタイムラインに表示されるため、みんなが怒っている」ように見える錯覚を生み出してしまうのです。
SNSのアルゴリズムは「炎上」を優先的に表示する
Twitter(X)やYouTube、InstagramなどのSNSは、ユーザーの興味を引くコンテンツを優先的に表示する仕組みになっています。そのため、炎上のように「強い感情」を伴う投稿は、アルゴリズムによって拡散されやすくなるのです。
例えば、Twitter(X)では以下のようなアルゴリズムが働いています。
① いいね・リツイートが多い投稿が優先的に表示される
- 炎上しているツイートは、「いいね」や「リツイート」が急増しやすい。
- すると、Twitter(X)のアルゴリズムが「人気の投稿」と判断し、さらに多くの人に表示する。
- その結果、たとえ一部の人しか騒いでいなくても、まるでネット全体が怒っているように見えてしまう。
②「関心がありそうなトピック」を自動でプッシュする
- Twitter(X)やYouTubeは、過去の閲覧履歴をもとに「あなたが興味を持ちそうな投稿」を優先的に表示する。
- そのため、「炎上」に興味を持った人には、より多くの炎上関連の投稿が流れてくる。
- 結果として、「最近炎上が多すぎる!」と錯覚してしまう。
このように、SNSの仕組みそのものが「炎上をより拡散し、目立たせる方向に働いている」というのが大きなポイントです。
メディアが炎上を「ネタ」として利用する
炎上が拡散されやすい理由の一つに、ニュースメディアやまとめサイトが「炎上」を利用していることも挙げられます。
ニュースサイトやまとめサイトは、多くの人に記事を読んでもらうことで広告収益を得ています。そのため、「炎上」という話題性のあるニュースは格好のネタになるのです。
メディアが炎上を拡大させる仕組み
- SNSで批判的な投稿がいくつか出る
- まとめサイトやニュースメディアが「ネットで大炎上!」と報道
- それを見た人がさらにSNSで拡散
- メディアが「さらに炎上が拡大」と続報を出す
- ループが発生し、炎上が長引く
特に、「ネットが大炎上!」と煽るタイトルをつけることで、より多くの人の関心を引こうとするため、実際の規模よりも炎上が大きく見えてしまうのです。
しかし、ニュースのコメント欄やSNSの反応をよく見ると、「そもそもこれって炎上してるの?」「そんなに問題なの?」という意見も多くあります。
つまり、本当に大勢の人が怒っているのではなく、メディアやSNSの仕組みによって「怒っているように見えている」だけというケースも多いのです。
なぜ「非実在型炎上」に踊らされてしまうのか?
SNSの仕組みとメディアの影響によって、私たちは「みんな怒っている!」という錯覚に陥りがちです。
- 「トレンド入り」=世間全体の関心が高いわけではない
→ 実際には数千件の投稿でもトレンド入りすることがある。 - 「いいね・RTが多い」=賛同者が多いわけではない
→ 炎上に便乗して拡散する人がいるだけで、世間の総意とは限らない。
こうしたSNSの特性を理解することで、炎上に踊らされず、冷静に情報を判断する力が身についていきます。
では、実際に「本当に大切な議論」と「ただの便乗騒ぎ」を見極めるにはどうすればいいのか?次のセクションでは、炎上の見極め方のポイントについて解説していきます。
本当に大切な議論 vs. 便乗騒ぎの見極め方
「炎上」と一言で言っても、その内容には大きく2種類あります。
- 社会的に重要な問題提起が行われている「本当に大切な議論」
- 話題性だけで広がった「便乗騒ぎ」や「ただの叩き」
しかし、SNS上ではこの2つが混ざってしまいがちです。本来なら真剣に議論すべき問題も、煽る投稿が増えることで炎上のように扱われたり、逆に一過性のネタとして消費されることもあります。
では、どのように「本当に大切な議論」 と 「便乗騒ぎ」を見分ければいいのでしょうか?ここでは、見極めるためのポイントを解説していきます。
便乗騒ぎの特徴
- 批判の内容が単純で、似たようなコメントばかり
- 「これはひどい」「許せない」「〇〇は終わったな」など、短文の感情的なコメントが多い。
- 具体的な問題点を指摘するのではなく、ただ感情的に否定する投稿が拡散される。
- そもそも「問題視されていなかったこと」が急に炎上する
- 昔から存在していたもの(広告表現、文化、慣習など)が 突然「問題だ!」と指摘されるケース。
- 例:「〇年前のアニメのセリフが今になって炎上」「過去の発言が掘り返されて炎上」
- 「叩くこと」が目的になっている
- 本来は「問題を解決するための議論」が行われるべきだが、ただ相手を叩くこと」が目的になってしまっている。
- 「〇〇は終わり」「〇〇は不買するべき」「アカウント消せ」などの過激な言葉が目立つ。
- 数日〜1週間程度で話題が消える
- 一時的に大きな話題になったとしても、数日後には誰も触れなくなる。
- 本当に重要な問題なら長期間議論されるが、便乗騒ぎはすぐに次の炎上ネタに移るのが特徴。
本当に大切な議論の特徴
- 多様な意見が交わされている
- 一方的な批判だけでなく、賛成・反対・中立などさまざまな視点の意見が存在する。
例:「〇〇の発言には問題があるが、一方でこういう背景も考えられる」
- 一方的な批判だけでなく、賛成・反対・中立などさまざまな視点の意見が存在する。
- 事実ベースで冷静に議論されている
- 感情的な言葉ではなく、根拠を示しながら議論が進んでいる。
- 「データではこうなっている」「過去の事例ではこうだった」など、証拠をもとに議論されているかどうかが重要。
- 継続的に問題提起されている
- その話題が長期間にわたって議論されているか?がポイント。
例:環境問題やハラスメント問題などは何年にもわたって議論が続いている。 - 1週間も経たずに話題が消えるものは、ただの一過性の炎上だった可能性が高い。
- その話題が長期間にわたって議論されているか?がポイント。
- 具体的な解決策が議論されている
- 本当に必要な議論なら、「どうすれば良いのか?」が話し合われるはず。
- 便乗騒ぎは「叩いて終わり」だが、社会的に重要な議論は「次にどうするか?」まで考えられている。
便乗騒ぎに巻き込まれないためのチェックリスト
SNSで「炎上」を見かけたときに、すぐに反応せず、一度このチェックリストを使って冷静に判断してみてください。
- 批判の内容は具体的か?(ただの感情的なコメントではないか?)
- 誰が騒いでいるのか?(少数の声が目立っているだけではないか?)
- 問題の本質は何か?(事実ベースでの議論が行われているか?)
- 長期間の議論になりそうか?(一時的なブームではないか?)
- 解決策が議論されているか?(単なる叩きではなく、建設的な話し合いか?)
このような視点を持つことで、ただの便乗騒ぎ」に巻き込まれることなく、本当に重要な議論に集中することができるようになります。
まとめ:「非実在型炎上」に振り回されないために
これからは「炎上」を見かけても、すぐに信じず、一度立ち止まるようにしましょう。
- 「炎上!」と言われても、実際の投稿数やトレンド入りしているかを確認する
- 怒りの感情に流されず、元の発言や動画をチェックする
- 冷静に議論している人の意見を探し、便乗しないようにする
SNSは便利なツールですが、「怒り」や「批判」を増幅させやすい仕組みになっています。
だからこそ、私たちは情報を見極める力を身につけ、安易に炎上に乗らないようにすることが大切です。
「みんなが怒ってる!」と思ったら、一度立ち止まる。それだけで、非実在型炎上に振り回されず、賢くSNSを使うことができます。